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宮下奈都 「よろこびの歌」 感想(4) - 牧野史香(サンダーロード)

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宮下奈都さんの「よろこびの歌」の感想、4回目です。

目次

 

 牧野史香

見える

幽霊が見えるというのはどんな感じだろう。「師匠シリーズ」というネット発のホラー小説のシリーズが好きで、怖い話は沢山読んだけれど、自分には見えない。

 

玲が落ちて、千夏が与えられなくて、早希は壊してしまった。史香は見える。

 

いちばん大変な時期を孤独に過ごした。どこにいても誰かが見えて、何かを伝えたがっているのを感じた。目を閉じ耳を塞いでやり過ごそうとしても、彼らの姿は見え、声が聞こえる。私の意思とは関係なくなだれ込んでくるのだ。

 誰もが何かを抱えていて、そのせいで何処かが曲がってしまっている。そうでない人もいるかもしれないけれど、大抵はそうだ。

 

高校を選ぶときは慎重になった。伝統のある学校はいけない。校舎が古くてもよくない。街中にあって人が多いのも避けたい。それで、比較的空いた電車で通える、新しい学校を選んだ。

それぞれの理由があって、それぞれ違った諦めがあってここにいる。それは、何処でも、誰でもそうなのだと思う。100万人に1人位、100%第一志望を突き進んで行ける人もいるのかもしれないけれど、大抵はそうじゃない。自分は与えられない側だと分かったり、信じていた才能につまづいたり、或いは突然大切な物が壊れてしまったりする。「見える」こともそういうことの一つだった。

 

リベンジ

 物語が少し進む。1話の最後で玲が聴いた歌を、音楽教師の浅原も聴いていて、もう一度歌わないかと言う話になる。

 

そう言えば、史香の視点では他の人との会話が少ない。「三谷くん」を除くと、ほとんどがモノローグか、誰かの会話を聞いているか。「見える」ことを話したくないから、本当に理解してくれる人以外とは深い話が出来ない。だから、音楽室にいるおじいさんの霊のことを、御木本玲に伝えるべきか迷う。

 

100パーセントのボコではないのかもしれない。ボコの中にデコが隠れている。ボコがデコを導いてくれる。この力が三谷くんと会うために授けられたのだとしたら、だけど、とんでもなく遠まわりの長い道のりだった。雷が鳴り響く真っ黒い空の下、どうにか続く道だけを頼りに必死に歩いてきた。

「 配られたカードで勝負するしかないのさ…..それがどういう意味であれ」と言うのはスヌーピーの言葉だけど、自分の持ってるものが何であれ、それを使うしかない。自分にとってはどうしようもなく嫌な、呪いみたいなことでも、それが誰かを救うこともあるかもしれない。

 

サンダーロード

御木元さんを見ているとわかる。この人の音楽への情熱はきっとデコであり、ボコだ。この人のこれからも、これまでも、そしてきっと今現在も音楽でデコボコしている。大変な道だろうな、と思うけれど、デコボコはあったほうが歩き甲斐がある。

心にデコボコがあって、あきらめがあるのなら、それがその人にとって大切なものだったからだ。どうでもいいことなら、多分ボコにすらならない。それが、100パーセントのボコだと思っていたとしても。

 

 

物語も後半に入って、少しずつ動き始める。抱えているものが何であれ、デコボコした道を進むしかない。明日は第5話、書けたら書きます。青の数学2の台詞で締め。

 

「面白いもんをやっていくってのは、きっと、散々な目にあうってことなんだよ」

 

 続きます。

・宮下奈都 「よろこびの歌」 感想(5) - 里中佳子(バームクーヘン)

 

それでは。

 

よろこびの歌 (実業之日本社文庫)

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