あさから。

本の感想、音楽の話、思ったことなど。

ブルージャイアントシュプリーム2巻感想。 欠片ほども疑わない。

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 10巻で一旦完結して、海外編として再スタートしたブルージャイアントシュプリーム。1巻に続いて、2巻の感想です。今回もネタバレ注意。

目次

 

全てを出し切って

 サックスプレーヤー宮本大を一言で表すとしたら、「全てを出し切って進む人」と言うのがしっくりくる。例えば、巻末インタビューの玉田の台詞。

一番強く感じてたのは、「オレはまだまだだ。だから全力で吹くんだ」ですかね。

( ブルージャイアント6巻 巻末 )

 或いは、7巻の居酒屋で酔った大が語るシーン。

あ、あとアレも取る!!アカデ・・・じゃなかった・・・グラミー賞!!

そのタメには・・・出しきる・・・思い切り、思い切って、毎日毎日出しきらないと。オレの持ってる全部を、毎日出しきらないと。

( ブルージャイアント7巻 )

 とにかく、全てを出し切る事だけを考える。雪祈や玉田が、才能とか積み重ねの事で悩んでいるのとは対照的に、大は悩まない。雪祈が、自分のソロについて悩んでいる時も、バッサリ切り捨てる。

オレはヘタでもクソでも、サックスを吹く時は1分1秒、いつでも、世界一だと思って吹いてる。なのにお前は、ソロをどう演るかで悩んでる。次元が違いすぎて話になんねえ。お話になんねえべ?

そもそも悩むこと自体おかしいだろ。お前に悩む資格あんの?悩んでる時間あんすか?ねえ。

( ブルージャイアント8巻 )

 だから、シュプリーム1巻のラストの大が考え込んでいたのは、珍しい。初めて、「どうして吹けないのだろう?」って言う、出しきること以外の事を考えていた。

 河原で吹いていた時から、河原では独学の自分を出し切っていた。師匠に教わった後は、その知識とテクニックを。東京に行ってからは、毎回のライブで全力を出し切ってきた。思えば、音楽に関してそれ以外の事はやっていない。ただただ、出し切る、一歩進む、出し切る、一歩進む・・・を繰り返して進んできた。

 だから、ドイツでも同じように進む。考えて出た答えは、「考え過ぎだ」ってこと。一つ一つの音に全力を込める。それ以外に方法は無かった。

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上出来です。それくらい、やれることをやった気がしています。

 今いる場所で出来る事は全部やった。だから、仲間を探して次へ行く。

仲間を探して

 毎日毎日、ジャズのライブに通い詰めて、気になるプレーヤーがいないか探し続ける。家に帰ると、いつも迎えてくれるクリス。1巻から、何故かずっと大をサポートし続けてくれるクリスに、訳を尋ねる。

 その後、クリスの語ったエピソードが2巻で一番良いシーンだったと思う。

ボクはその時、世界はこうやって回ってるんだって・・・

世界はこうして回さなきゃなって、そう思ったんだ。

 そして、大は一人のベーシストを見つける。

欠片ほども疑わない

 ハンナ・ペーターズ、と言う名前の女性ベーシスト。2巻の後半は、彼女を探す物語になっている。しかも、一度きっぱり断られた相手を。人口176万人のハンブルクで。

 読んだ後で思ったのは、Facebookに登録してたら一瞬で終わったかもなあ、と言うこと。自分の住んでる札幌市の人口は200万人位で、ハンブルクより多いけれど、もしミュージシャンの名前と顔写真があれば、意外とすぐに見つけられる気がする。ただ、「SNSを使ってない」&「日本全国」って言う条件になったら、難易度が跳ね上がる。

 話が逸れた。ついでに話を逸らすと、雪祈は東京でオジサンを探そうとしていた。結局見つけたけれど、言葉の壁を差し引いても、あっちの方がずっと難易度高いと思う。顔写真もないし、名前も分からない。

 そういう事は思ったものの、この人探しには凄く勇気づけられる。

 「余計な事はどうでも良い。オレはハンナ・ペーターズを絶対に見つけ出す」

 ただそれだけの決意で、迷わず進む。「見つかるだろうか」なんて、欠片ほども疑わない。

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 例えば、足で幾ら探しても見つからなかったら、きっと大はSNSを使っただろうな、と思う。何をどうするかは、どうでも良い。想いがシンプルだから、迷わない。もし、下手に頭が良かったら、「一番効率的に人を探す方法」を考えて、その結果見つからなかったら、簡単に諦めてしまったかもしれない。方法はどうでも良い。想いがシンプルで、強いかどうか。

 自分の好きな作家の、王城夕紀先生も2巻の事を語っていた。

  王城先生の作品にも、恐らく理想としての真っ直ぐな思いを持った人たちが登場する。青の数学の皇大河や、天盆の永涯みたいな。

 もっと真剣に向き合え。迷わずに、疑わずに。そんなことを強く感じた。3巻では、強い音がぶつかり合う事になるはず。期待。あと、カラーページ多くて良かった。

 そんな感じのシュプリーム2巻。3巻出るのを待ちます。

 それでは!