あさから。

本の感想、音楽の話、思ったことなど。

People In The Box 「Kodomo Rengou」の感想。

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 People In The Boxのニューアルバム「Kodomo Rengou」がリリースされました。23日にタワーレコードで買って、その日の内に聴いて、未だに全体像を把握できていないけど、今思ってることを書いていきます。

 

People In The Boxについて

 これを読んでくれてる人の中で、どの位「Kodomo RengouでPeopleを知った」と言う人がいるか分からないけど、一応。3年前に一度紹介する記事を書いてたので、知らない方は目を通してもらえると何となく雰囲気が掴めるかも。

asakara.hatenablog.com

 あと、最近見つけたこの記事なんかも良いです。

wanijin.hatenablog.jp

 ここからは、あくまで個人的な感想なので、幾らでも異論があって良いです。恐らく、今回のアルバムはピープルの中でも聴く人によって十人十色違って聴こえるアルバムだと思うので、感想という名の精神分析みたいなものだと思ってもらえれば。

 

Kodomo Rengou

 People In The Boxというバンドは作曲ペースがすごく速いのだけど、それでもフルアルバムは中々出ていなくて、今回は3年半ぶりとからしい。

 前回のアルバムはWall,Windowという緑色のジャケットのアルバムで、今はもう閉鎖してしまったピープルのブログの中で、波多野さんが「一瞬だけリスナーを絶望の底へ落としたかった」みたいなことを言っていた。「夏になるたび、Wall,Windowを思い浮かべることだろう」とも。あと、その時ライブの最初に、リリースツアーだけの歌を歌っていて、その歌詞ももう見れなくなってしまった。寂しい。壁と、窓と、聖者が出てくる歌詞。

 確かに、前回のアルバムはすごく夏感があった。「翻訳機」の爽やかさ、「影」の蒸し暑さ、「さまよう」の駆け抜けていく感じ、「月」の静かな夜の感じ、色んな夏の風景があったなあと思う。一方で、今回のKodomo Rengouは季節感っていう季節感が全然ない。Wall,Windowほどじゃなくても、今までのアルバムも結構季節感が(個人的には)あると感じていたので、Family Record以来の感覚。

 波多野さんが何回も「今回のアルバムはフィクションだ」って言っていて、「今まではノンフィクションなの?」と少し思ったけれど、多分、気持ちの部分の話なのだろうと思う。自分の意思を込めて描くフィクションと、もっと純粋に音楽に導かれながら描くフィクションの違い、みたいな。

 最近の音源だと、Talky Organs辺りを聴いていると、訴えかけたい事があるのが伝わってくる。空は機械仕掛けとか、逆光とか。それはもうそこでやったから、その次に行ったのかもしれない。

 インタビューなど

 公式HPを見ればすぐだけど、結構色んな所にインタビュー記事が載っていて、読んでいくと面白い。

mikiki.tokyo.jp あと、公式のライナーノーツとかも。もう一つなんかあったんだけど、見つけられなかった。Twitterで直接質問に答えてた企画も、ディスコグラフィーの所から見られるので、結構色々資料が揃ってて良い感じ。以下感想。

 

収録曲と感想

1.報いの一日

 今まで聴いたことのないギターの音が終始鳴ってる曲。弾き方がネックらしいけれど、どうやったらこんな音が鳴るのか良く分からない。管みたいな音。

 ちなみに、アルバム発売前から結構な曲数をライブとかDVDで聴いていたので、曲名が発表された時点で「どれが聞いたことある曲だろう?」と思っていた。この後出てくる「泥棒」が報いの一日なのかな?とか思っていたけれど、始まってみると、曲名に反してさらっと、というか軽い感じの曲調で「こんな感じで始まるんだ」と、ちょっと意外な感じ。もっと重たい感じかと思ってた。

 多分、Kodomo Rengouの歌詞は、今まで以上に「解釈の余地がない」ものな気がしている。ピープルの、というか波多野さんの歌詞が難解なことで、色んな人が色んな解釈で聴いていたけれど、今回のアルバムはこれまでよりももっと純粋に、「音に色を付ける」っていう意味の歌詞なんじゃないかなあと。

 それを一番感じたのはこの後出てくる「デヴィルズアンドモンキーズ」なのだけど、報いの一日の歌詞も、深く考えずに、音と言葉を頭の中で受け取るのが良い気がした。

 強いて言うと、この曲を聴いていて「巨大な壁」と「描かれた都市」が頭の中に浮かぶ。それが、ここから始まるKodomo Rengouの曲たちの暗示というか紹介なのかなと。すべてフィクション、描かれた都市だよ、っていう。

 

2.無限会社

 これはつい最近のライブで聴いて、「おお、ラップだ」って思った記憶が。ピープルって語りはあってもラップは無かったので、最初の「ひっくり返して~」からの歌が凄く印象的だった。音のせいか、夜の街と救急車のイメージ。

 

3.町A

 「さしあたっては奇跡には用はない」からの流れがすごく好きな曲。ピープルの曲で、あんまり身近な風景が出てくることが無かったと思うので、それだけでも新鮮な感じがした。1曲目に「報いの一日」があることで、少し曲の意味合いが変わっているような気もする。

 「空気公団」という凄く好きなバンドがあって、彼女たちの音楽では意識的に人と音楽と街との距離感を埋めようというか、無くそうというか、繋ごうとしている。そういう意味での街ではなくて、あくまで風景の一つとしての町A。リスナーと、その町の間にはしっかりと線を引いている感じがした。

 

4.世界陸上

 透明なピアノの音がずっと鳴っていて、曲全体も透き通ったイメージ。こんなきれいな音に載せて、「勝ち続けなければいけない 細胞」と歌うのがなんだかシニカルな感じ。世界陸上というタイトルだけど、最初の方で出てくる金融街の方のイメージが強く頭に残った。 

 

5.デヴィルズ&モンキーズ

 ライブでも一度聴いたことがあり、その時の感想は「なんか懐かしい感じを思い起こさせる音像だなあ」という感じだった気がするけど、Kodomo Rengouの中で一番好きな曲かもしれない。

 前半の展開は頭には残るものの、それほど凄く好きな感じではないのだけど、後半「ごらんよ~」からの流れがヤバい。

ごらんよ

空き物件の屋上からの一面の炎

ほらごらん

歴史は栄えあるハロウィン

 ここからの音楽と言葉の一体感が凄すぎる。頭の中で、遠くの燃え上がる炎を思い浮かべたと思ったら、その後の「歴史は栄えあるハロウィン」で一気に場面がカーニバルに。前半の展開で色んな名詞が出てきて、踊る、とか、パレードって言葉が出てきてるのが、「ごらんよ~」からの展開で一気に一つにまとまっていく感じ。

 「悪魔が去るまで」の後の、ボン、ボンっていうベースのリズムに歌が乗って、少しずつ音が派手になって行って、最初の「さよならハロウィン」の後で一気に盛り上げていく展開も、歌詞と相まって凄く良い。頭の中で、徐々に風景が騒がしくなっていって、「ららら~」の辺りで色んな人、物が入り乱れた大騒ぎ、カーニバルになっていく。最後のギターのアルペジオで、本を閉じたようにまた風景が切り替わっていく。

 なんとなく、思い浮かべる風景がアルバムWeather Reportの「塔(エンパイアステートメント)」に似てる。終末感というか、年末感というか。「さよならハロウィン」っていう言葉の選び方もすごい。この音楽に対して、これ以上無い位にピッタリなフレーズ。

 そういえば、今回のKodomo Rengou、なんとなくどの曲も1曲終わるごとに本のページをめくるみたく、シーンが切り替わっていっているイメージだった。Kodomo Rengouの世界で、後ろをついていっている自分と、ページをめくる自分がいる感じ。

 

6.動物になりたい

 確か、アコースティック版のライブで初披露された曲。DVDのCut Fiveにも、既に「動物になりたい」って言うタイトルで収録されてる。5月のライブでも聴いた。

 この曲は、元々それほど好きな感じの曲ではなかったのだけど、アルバムを繰り返してる内に、一二を争う位に好きな曲になってきた。

目にも止まらない速度で処理されていく風景を

銀行のソファで眺める 西陽射す午後3時

 歌い出しから引き込まれる。「ディズニーの曲?」って思う位の、今までのピープルには無いような美しい音で、ゆっくりと風景を語っていく。弦みたいな音は全部ギターらしい。

 波多野さんの歌詞の魅力は色々あるけれど、僕が一番思うのは「やさしさをマイナスな言葉で表現するのがとても巧い」ということ。「動物になりたい」を聴いて、それがどういうことなのか、また少しわかった気がした。

日々ささやかな工夫を凝らして 過ごして

胸の痛みはそのままに

 「あなたの中の忘れた海」という曲の中でも、「胸の痛みは古い友達 これからもどうぞよろしくね」という歌詞が出てきたのだけど、波多野さんの描く優しさは、胸の痛みなんだなあと思った。

ほおばるビスケット 足りないアルファベット

親切さには敵わないアルファベット 

 波多野さん自身が「Kodomo Rengouの歌詞はフィクションだ」と言ってはいるけれど、元になっている感覚は紛れもない本物だと思う。自分の心が痛んだ時に、その奥を覗いてみると見えるものがある。自分ではどうしようもないと思う事だったり、元には戻せないものだったり。それは言葉で言い尽くせるものじゃなくて、それなら、言葉を使わない動物になって、もっと純粋な感覚を知りたい。そんな歌詞かなと。

 

7.泥棒

 これもライブで聴いた曲。何なんだこの曲は。。。と最初にライブで聴いて思い、アルバム一回目聴いてまた思い、未だに思ってる。何なんだ。

 

8.眼球都市

 Cut Five収録。デヴィルズアンドモンキーズもそうなのだけど、この曲も歌詞がヤバいなと思った。この音に点/線/矩形/曲線ってよくあてるなあと。

 今回のアルバムの歌詞は、一般的に言う「歌詞を書く」と少し違くて、「音に言葉を着せる」みたいな、そういう事なのだと思う。聴きながら思い浮かべる、訳の分からない都市の感じ、冷たくて整った感じを、言葉にして音に着させたのだと。

 

9.あのひとのいうことには

 ライブで確か聴いた曲。この曲もちょっと、アルバム内では印象が薄いです。

 

10.夜戦

 ライブで聴いて、DVDにも収録されていた曲。この曲は、「あれ、ライブ版の方が良いぞ」と思ってしまった。それが良いのか悪いのか分からないけど。最初にライブで聴いた時に「すごい曲きたな」と思って、DVDで聴いても「やっぱすごいな」ってなったせいか、音源の感動はそれよりも下になっていた。多分、頭の中でイメージしてた夜戦がライブ版の、疾走感ある感じというか、タイトな感じだったからかも。音源だと、それよりも優しい感じというか、柔らかい感じも少し入っていて、最初からそれを聴いてたら何も違和感なかったんだろうなあと思うけれど、予め聴いていた分、「そっちで来たのかあ」というのがあった。

 と、書きながらCut Fiveの夜戦を聴き直してみたのだけど、やっぱりライブ版の方が好きだなあと思った。なんか、この曲は余計な音が無い方がカッコ良い。多分、音源の歌い方もちょっといつもと違うのだけど、ライブでいつも通り歌ってる方が自然に入ってくるというか。

 もし、「アルバム内で夜戦が一番好き!」という方で、Cut Fiveまだ見てない方がいたら、聴き比べてみると面白いかもです。曲は本当にすごい気持ち良い曲。ライブで聴いた時は、この曲がリードトラックになるんだろうなあと思ったくらい。

 歌詞の話をすると、「もうまにあわないかもしれない」っていうフレーズが耳に残る。そのフレーズの後にリズムが変わって気持ち良いって言うのもあるかもしれないけど。今夜が最後、もう一度だけ飛び出していくようなイメージ。

 

11.かみさま

asakara.hatenablog.com

 かみさまは、MVが公開された時に個別で書いてました。iTunesでもダウンロードして、発売前からこの曲だけ繰り返し聴いてたので、印象はそんなに変わらないかなあという感じ。ちなみに、ダウンロードしたせいで、iPodのKodomo Rengouにかみさまが2つ入ってます。

 

12.ぼくは正気

 「ばいばいかわいかったうない」って、何?と皆思った(はずの)曲。しかも、ぼくは正気らしい。最初聴いた時は「脳内かな?」と思ったのだけど、あんまり考えないことにした。深い森の曲なんだなあ、と思った。音がすっと暗くて深い森の奥へ誘い込んでくる感じがする。それを、後ろから見ているようなイメージ。

 最後、鍵盤の音の後に少しだけ環境音が入っていて、それが絵本を閉じて立ち去るようなイメージだった。Kodomo Rengouの世界の中を、ずっと後ろから付いて眺めているイメージだったのが、最後、本を閉じて現実世界の方へ戻っていった感じ。

 Talky Organsの時も、ラストでちょっと違うけど、ある仕掛けがあって感動した。波多野さんが作り手として、「リスナーの時間を預かっている」って言う意識が凄くあるからなのか、「世界へ連れ出したなら、連れ戻してくる所までが作家の責任だ」っていう意識もあるのかもしれない。ジョンラセターみたいに。

 「ぼくは正気」っていうタイトルも、Kodomo Rengouの中の「彼」の話で、こちら側から見たら何処かおかしく見えるけど、彼にとっては分からない。そして、僕らもそうかもしれない。そういうことなのかなとふと思った。

 

 おわりに

 そんな感じのKodomo Rengou。かみさま、デヴィルズアンドモンキーズ、町A、動物になりたい、辺りが特に気に入ってる。デヴィルズアンドモンキーズの「ごらんよ~」からの流れは、何回聴いてもやばいなってなる。 

 今までのPeople In The Boxから一つ外側へ抜けたようなアルバム。色んな世界を覗けるので、気になる方は是非聴いてみてください。

 

 それでは!