あさから。

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空気公団の話をしよう(6) 4thアルバム「あざやか」の話。

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  空気公団を振り返るシリーズ6回目。フルアルバムを順番に追っているけど、「夜はそのまなざしの先に流れる」以降は個別でもう記事を書いてるので、次回「メロディ」、次々回「春愁秋思」、その後最後まとめみたいな感じにしようかと。

 多分、間に1回MVのフル版が公開されて、それについて書くと思います。今回は、4thアルバム「あざやか」について。

 

あざやか

 2005年発表のアルバム。自分は、空気公団を知ってからリアルタイムで追いかけたアルバムが「夜はそのまなざし~」以降なので、このアルバムも後から、他のアルバムと一緒にまとめて聴いた。その時に、「なんか、このアルバムだけ雰囲気違くない?」と思った。ジャケットが山崎さんのアップだから、とかじゃなくて。アルバム全体として、大雑把な言い方をすると、フックの強い曲が少ないというか。

桃色の絨毯~みんなお誕生日

 1曲目の「桃色の絨毯」から、今まで(アルバム「こども」まで)の空気公団と、雰囲気が違う。どことなく、和を感じさせるメロディと、それまでの「空気感」とは違う世界観。

 振り返っているから書けることだけど、「桃色の絨毯」と似た雰囲気を感じるのって、アルバム「こんにちは、はじまり。」のラストナンバー「お山参詣登山囃子」位な気がする。お山参詣~は、山崎さんの出身地、青森の民謡の空気公団カバーらしいけど、「桃色の絨毯」もどこか民謡っぽい感じがある。それでいて、壮大な感じ。リアルタイムで空気公団追いかけていた人は結構ビックリしたんじゃないだろうか。自分も、お山参詣~を最初聴いた時に「何じゃこりゃ」ってなったし。

 2曲目の「とまれうた」も、笛の音が入っていたりと、「桃色の絨毯」の流れを汲んだような、和の感じが。ただ、この曲はアルバムの流れで聴いていくと、曲の最初は和の感じで流れていくけど、後半に行くにつれて、少しずつ今までの「空気公団っぽい感じ」に戻って来て、次の「みんなお誕生日」では完全に空気公団になってる。

 3曲目の「みんなお誕生日」。ここまで来て、「ああ、知ってる空気公団だ」ってなる。この曲も、結構実験的というか、音の重ね方が面白くて、聴いていて飽きない。メロディとか、歌詞は空気公団なんだけど、展開が全然ストレートじゃなくて、急にコーラスが入ってきたり、変わった音が鳴ったり。「あざやか」では、現メンバーの窪田さんがアレンジャーとして参加していて、それで面白いアレンジになってるのかなとか思った。窪田さんの作るインストっぽい要素が結構入ってる曲。

 

6月のポムさん~少し笑った横顔に

 4曲目「6月のポムさん」。なんとなく、この曲がリードトラックで良いんじゃないかなあという感じの、空気公団感溢れる名曲。

グレーの毛に青い瞳
君はどこから来たのさ
遠い町で生まれました
丸い背中に物語が
食事でもどうか

空気公団 - 6月のポムさん)

  ポムさんは猫なのだろうか。ちなみに、作曲が戸川さん。シンプルなアレンジに、空気公団らしいコーラスが乗って、ただただ良い曲。

 続く5曲目「28日の大通り」。この曲は後ろで左右に揺れてるシンセの音?がゆらゆらしていて気持ち良い。多分、このアレンジも窪田さんのアイディアだと思うけれど、なんか寒い季節の空気感がすごく出てる。コーラスも相変わらず素晴らしい。

 6曲目「雨音が聞こえる」。そういえば、「雨音が聞こえる」ってブログも書いてるけど、今は全く関係ない。アコギとボーカルが主体のアレンジで、山崎さんの声が耳に入ってくる。ほんと綺麗な声だなあと思う。綺麗というか、空気公団の歌を歌うために存在してるみたいな声。

 7曲目はインスト曲。個人的に、空気公団の曲って歌入りの曲も大好きだけど、インストもすごく好きで、インストだけのプレイリストを作って時々聴いてる位。この曲もほんと良い。

 

風に乗った言葉~あざやか

 8曲目「風に乗った言葉」。口笛から始まる、爽やかで明るい曲。風、空、遠くの街、白、雨。空気公団っぽいワードが沢山出てくる曲。アルバム内でも、一番空気公団のイメージに近い曲だと思う。例えば、この曲が1曲目だったら、「いつもの空気公団だな」ってなっていたと思うけれど、アルバムの流れで、後半にこの曲があることで、「そうだそうだ、これが空気公団だ」って段々思い出していくような感じもある気がする。

 9曲目「カレンダー」。段々終わりが近づいてきた感じの、夕暮れ感のある曲。空気公団の曲って何処か寂しさがあって、そこが美しいなと思う。ただただ明るいだけでも、暗いだけでもなくて、色んなことを受け止めている感じというか。どこか、諦めと希望の入り混じったような。

 10曲目「あざやか」。アルバムタイトルと同じ曲名。この曲、空気公団の中では結構歌詞が長くて、歌詞を見ながら聴いてるとすーっと引き込まれてた。切ない曲だけど、夢から目覚めたような、聴き終わった後、朝の光に包まれたような感覚になる。

 ここからはすごく個人的な好みの話なのだけど、作家には2種類あって、物語に引き込んでお終い、という人と、引き込んだら現実へ連れ戻す所までが作家の責任だと思ってる人。良い悪いの話じゃなくて、個人的に僕は後者の方が好きで、例えばピクサーのジョンラセターとか、People In The Boxの波多野さんも最近のアルバムでは明らかにそこを意識している気がする。

 空気公団もそうだと思うのだけど、空気公団は最初から音楽と風景を融け込ませようとしていて、深い所まで連れていく、というよりは、空気公団の世界と聴いている人の世界を、どうやって交わらせようか、という事を考えているように思う。例えば、インスト曲だったり、曲中に入る環境音だったり。そういうものの全部が、空気公団の世界と僕たちの世界を繋ぐ役割を持ってる。

 10曲目の「あざやか」を聴いて、朝目覚めたような感覚になると同時に、アルバムの世界からも覚める、っていうリンクの仕方は空気公団の世界観だからできたのかもなあと思った。

 

アルバムのこと

 ジャケットのモノクロの山崎さんのアップと、1曲目の「桃色の絨毯」から、少しずつ緊張感が融けて色鮮やかな空気公団になっていく感じ。「あざやか」っていうアルバムタイトルの中に、「鮮やかってどういう事だろう?」って言う問いがあったのかも。山崎さんの問いかけって奥が深すぎて、あんまり着いていけないこともあるけど。

 鮮やかであるためには、「鮮やかじゃない事」を知っていないといけなくて、その為に1曲目、2曲目を少し緊張感漂う、今までの空気公団と違う雰囲気にしたのかもしれない。そこから、少しずつ色がついていく感じ。ジャケットの山崎さんがモノクロなのも、アルバムを聴いた後で、それぞれ色を付けて、ということかも。

 

 そんな感じの4thアルバム。なんか、書いてたら長くなった。ちょっと変わったアルバムだと思うけど、一回聴いてみると面白いと思います。空気公団知らない人に、最初にはおススメしない感じのアルバム。良い曲沢山あるけども。

 

 そんな感じの第6回。次回は5thアルバム「メロディ」の話を。

 それでは!

 

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