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空気公団の話をしよう(8) 6thアルバム「春愁秋思」の話。

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 空気公団を振り返るシリーズ第8回。次回でラストの予定。今回は、6thアルバム「春愁秋思」の話です。

 春愁秋思

 アルバム「春愁秋思」は2011年のリリース。個人的には空気公団のアルバムの中でも、かなり上位に入ってくる作品。春と秋。空気公団の描いてるテーマ、季節感をひとつにまとめたようなアルバム。10曲どれも素晴らしくて、いつ聴いてもやさしくて、きれいで、寂しい。

 それと、このアルバム辺りから空気公団のアルバムはよりコンセプチュアルというか、1曲1曲よりも、アルバムとして全体で見た時に一つの大きな作品に見えるようになってきた気がする。「メロディ」以前もそうだったのだけど、「春愁秋思」以降は更にそれが強くなったと思う。

www.youtube.com ダイジェスト映像もあるので是非。この後にも書くけれど、「春愁秋思」はダイジェストを作っていたり、ライブDVDがあったり、他のアルバムと比べても力の入れ方が違う感じがする。

 

特集ページ

 空気公団の公式HPに、アルバムの特集ページがあるので、気になる方は見てみると面白いと思います。

www.kukikodan.com

 OTOTOYのインタビュー記事も載ってて、面白い。「今回は録音の時に一回もクリック(メトロノーム、リズムを合わせる音のこと)を使いませんでしたから」って言ってる所が特に。クリック使わないことで出る、ちょっとした間の取り方とかで、空気感も変わってくるだろうなと思った。

 

収録曲

1.まとめを読まないままにして

www.youtube.com

 公園でのライブ映像。一応MV。音源で聴いてる音と全然違うのに、昼間の公園の雰囲気と相まって素晴らしい演奏になってる。個人的に、このライブ映像が一番「空気公団ってこんな」って言うのを表してると思うので、知らない人にはぜひ見てほしい。ほんと良い。

 最後の方なんか、アコギのバッキングに自由に他の楽器合わせてるだけで、山崎さんは歌わずに歩いてるだけだけど、それだけでもう空気公団の音楽になってる所が、中々真似できないよなあと思う。音源をしっかり作り上げた上で、それをいろんな形に崩しても、空気公団って言う軸は一切ぶれずに、むしろ広がりが増えていくって言う。すごいバンドだなあと思う。

 この曲には、空気公団の曲で良く出てくる「白」という言葉が登場するけれど、今回は「真っ白い靴が汚れている それぐらいがなんだか好きなんだ」「真っ白い壁は苦手だな もう何かが描かれているようで」と、真っ白が苦手という歌詞。思えば、空気公団の描いてきた「白」は真っ白じゃなかったのかも。少し灰色がかっていたり、汚れていたり、しわがあったり。そういうイメージの方が風景になじみやすい。

 

2.春が来ました

 これも名曲。ベースを中心に、楽器隊が全部格好いい演奏しているのだけど、それを先導するような山崎さんのボーカルが柔らかくて、遠くへ連れて行かれそう。

 空気公団の特徴の一つに「コーラスが素晴らしい」って言うのがあって、1stアルバムの時からそうだったけど、一層良いコーラスが聴ける曲。

 あと、歌詞を文字で見た時のイメージ、タイトルのイメージ、曲のイメージがこんなにピッタリ合ってることも珍しいと思う。春に聴きたい曲1位。

 

3.だんだん

 ネコ?の曲。空気公団の曲には猫っぽいモチーフが良く登場する。シンプルなリズムに、ボーカルがしっかりとメロディを歌って、楽器隊が自由に遊んでいるようなイメージ。歌詞をしっかり聴かせるのに一番良い構成だと思う。

 「僕らもそれに 近いもんです」

 ちょっとクスッと出来るような歌詞もすごく良い。

 

4.毎日はカノン

 インスト曲。カーテンを閉める音とか、扉を閉める音とか、環境音が入っていて、それが心地良い。OTOTOYのインタビューによると、アイディアは戸川さんで、山崎さんが何十パターンも音を録って切り貼りしたとか。

 

5.絵の具

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 空気公団公式Youtubeの再生リストに、「絵の具」をBGMにした動画があった。

 この曲も音像の作り方がすごいなと思う。「絵の具」というタイトルで、具体的な色のことは何も言わずに、心のことを書いている。それが、音と合わさって絵の具が混ざりあったようなイメージになる。

 ちなみに、DVDにはMVが入ってるので気になる方は是非。

 

6.僕ら待ち人

 シンプルなメロディ。山崎さんの歌い方がしっとりと、ひとつずつ言葉を伝えるような感じに。

 

7.日寂

 この曲は、聴いていても何を言ってるのか分からないのだけど、歌詞を逆から歌っているという曲。

 

8.文字のないページ

 7分強の、空気公団の中でもかなり長い曲。

読み切れない気持ちがあふれた時

僕らに言葉がうまれるだろう

 曲が長いのは、季節をひとつひとつめくっていくイメージなのかも。言葉ではなくて、風景がそこにある。言葉なんかよりも、僕らが見て来た風景の方がきっと大切で、言葉は溢れて出てくるもの。

 

9.春愁秋思

 表題曲。春は少し悲しくて、秋は少し寂しい。空気公団の曲にはどこか寂しさがあって、それが美しいなと思うのだけど、それを形にしたような曲。

 寂しいとか、悲しいとかって言う気持ちを、乗り越えるでもなく、見ないふりをするでもなく、ただそこにあるものとして受け入れる。何もしないけど、そこにあることを許してあげる。1stアルバムの頃から、ずっとその姿勢が変わっていないように思えて、そこが好きだなあと思う。 

 

10.なんとなく今日の為に

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 ラストナンバー。この曲は是非MVを見てほしい。出来れば、休日の午後とかに。

 なんとなく今日の為に生きてきたかもしれない。確信を持って言う訳でもなく、何となくそう思う。それだけでも、私たちはもう少し大丈夫でいられる。

 多分、普段色んなことを忘れてしまってるけど、落ち着いてこのMVを見てたらいろんなことを想い出せる気がする。良い曲です。

 

 Live春愁秋思

 そんな感じの春愁秋思ですが、なんとライブDVDが出てる。このDVDを見たのは結構前だけど、最初見た時は「なんて素晴らしいライブ映像なんだろう」と思った。ノイズがあったり、綺麗な映像という訳じゃないのだけど、空気公団の演奏の「空気感を映し」ていて、それがたまらなく良かった。

 DVDは「空風町Live」というのも出ていて、それはそれで良かったのだけど、結構演出している感じがあった。それに比べると、本当に自然な映像で、その自然さが魅力を引き立たせてるように思う。

 

 結構長々と書いてきた空気公団を振り返るシリーズ、多分次回で最後です。「夜はその~」以降のアルバムについては、もう書いてるので。

 何書くか決めてないけど、最後に思ったこととか、何かまとめ的な感じで書くと思います。

 

 それでは。

 

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