People In The Box について語る。
3ピースバンド、People In The Boxの紹介です。ジャンルとしてはマスロック・ポストロックという、少し難しい所に入っていますが、その世界観が圧倒的で好きな人は一気にハマってしまうと思います。
目次
People In The Box
People In The Boxとは
波多野裕文(ボーカル・ギター)、山口大吾(ドラム)福井健太(ベース)の3ピースバンド。
ジャンルとして「ポストロック・マスロック」みたいな所に入れられているけれど、正直、ジャンル分けはあまり意味無いような気もする。
知ったのは割と最近で、最初に「これやばい」となったのが「ダンスダンスダンス」だったと思う。聴いていて、頭の中がぐらんぐらんした。PVを見ると、余計にグラングランする。
ダンス、ダンス、ダンス
People In The Box - ダンス、ダンス、ダンス
3rdフルアルバム「Ave Materia」収録の「ダンス、ダンス、ダンス」と言う曲。独特のMVは、映像作家の加藤隆氏が担当している。
ピープルの曲は、頭の中がぐらんぐらんする感じを、なるべくそのまま曲にしようとした結果、例えば変拍子だったり不思議な歌詞だったり、動きまわるベースだったりが出来てる気がする。
変拍子と転調
変拍子と言うのは、5拍子とか7拍子とか、1拍多かったり少なかったりすることで、ちょっと違和感のある拍子のこと。
転調は、曲の途中でキー(ハ長調とか、そういうやつ)が変わることなのだけど、ピープルの曲は結構それを多用している。最近は、特にリードトラックに関しては真っ直ぐな曲を出す様になってきたけれど。
完璧な庭
2ndミニアルバム「Bird Hotel」収録の「完璧な庭」と言う曲。
例えば、この曲のイントロからメロ部分の拍子を数えてみると、3,3,3,2の11拍になっている。何か指でトントン叩きながら聴いていると、一拍足りないのでちょっと「あれっ」となる感じ。
月曜日/無菌室
こちらは、3rdミニアルバム「Ghost Apple」から、「月曜日/無菌室」。
1,2を争う位に好きな曲。ミニアルバム自体も名盤。この曲は変拍子では無いのだけど、2番でFからDに転調している(CDEFGABC=ドレミファソラシドです。F=ファ、D=レ)。一番のサビが終わった後、間奏のキー(調)が少し違うのが分かると思う。2番のメロはDで、サビでまたFに戻っている。
関係ないけれど、Mr.Childrenの終わりなき旅は長い曲を飽きさせないために8回転調するという荒業をやっている。
変拍子も転調もテクニックの一つで、例えば「マスロックだ。とりあえず変拍子使っとけ」と言う感じで使われても、聴いている側には苦痛でしかないと思う。良くも悪くも、ナチュラルではないので。
ピープルの場合、曲の面白さとか、表現したい事が先にあって、そのためにそういうテクニックを使っている感じが強くする。
波多野裕文とギターボーカル
ボーカルの波多野さんは、主に良い意味で結構変な人だ。分かりやすいのは歌詞なのだけど、それは後にしておく。
ギターボーカルとして、ちょっと変態的なことをやっている。
People In The Box 生演奏
過去に一回、波多野さんがボーカルに専念してギターを他の人に弾いてもらう、と言う事をやったことがあったのだけど、基本的にはどのライブもギターボーカルを担当している。
ギターボーカルのバンドは沢山あるのだけど、多いのがボーカルはコードバッキングメインで、歌っていない時にソロを弾く、と言う位の人が殆ど。
そんな中、ピープルは3ピースで楽曲の強度を高めるために、波多野さんがリードギター兼ボーカルを担当している。例えば、上の動画を例に出すと、1曲目の翻訳機の2番、歌いながらアルペジオでギターもメロディを弾いている。
歌いながら、歌のメロディラインと違うメロディを弾くというのは、結構難しいものなのだけど、殆ど全部の楽曲でそういうことをしているから、当たり前にしか見えない。
空は機械仕掛け
最近、一番「この人変態だ」と思ったのが、DVD「Cut Four」でミニアルバム「Talky Organs」収録の「空は機械仕掛け」と言う曲を演奏していた時のこと。
音源が無いので説明しにくいのだけど、2番のメロ部分で、ギターはずっと3拍のアルペジオを弾き続けて、ボーカルは4拍で歌う、という一人ポリリズムみたいなことをやっていた。アイディアとして思いつく分には良いけれど、それをライブでやるのはどうかしてる(褒め言葉)。
ちなみに、楽器が出来る人は少し波多野さんの真似をしてもらうと分かるかもしれないのだけど、歌いながら楽器で別のメロディを弾いていると、結構頭がゆらゆらする。この感じが、ピープルの曲を聴いた時の感じに似ているので、もしかしたら曲に込められている感覚は波多野さんがライブで体感しているものに近いかもしれない。
歌詞
旧市街
朝食に毒を密かに漏れ
長い土曜日を終わらせる為に
軌道を外れた人工衛星の物憂い視線 緩んだ口元
(旧市街)
2ndフルアルバム「Family Record」から、「旧市街」。
旧市街はピープルの中でもぶっとんだ曲だけど、歌詞に関してはどれもこんな感じ。もし、聴きながら「訳分かんねーよ」ってなったら、「それがいいんじゃない!」と即座に言うのが聴き続けるコツ。みうらじゅんさんから学んだ。
ちなみに、Family RecordはPeopleの中でも特にキャッチーな曲が多くて、最初に聴くのに向いているアルバムだと思う。
分からない、と言うこと
個人的には、はっきりと分からない表現の方が好きだ。それは、敢えて分かりにくくしているという意味では無くて、表現者が自分の伝えたい事を100%伝えるためには、一般的に見て分かりにくくなってしまっている、と言う状態の事。
そういうものは、最初に見たり聞いたりした時は「分かんねー」となるのだけど、「わかんないけど、なんかすげえ」ともなる。ただ単に、分かりにくくしただけだと「わかんねー」で終わってしまう。
おわりに
ボーカルの波多野さんは歌詞について絶対に語らないので、好きなように解釈して良いと思う。それが出来る位の強度がある。
そんな感じのPeople In The Box。他にも、ドラムの人が面白いとか、ベースが凄い動くとか色々あるけれど、その辺りは聴いていると段々入ってくると思う。
ちなみに、自分が好きな曲は上で挙げた「月曜日/無菌室」と、アルバム「Wall,Window」のリードトラックの「翻訳機」、あとFamily Record収録の「スルツェイ」など。 最初はCDなら、Family Record、DVDならCut Fourを聴いて(見て)みるのがオススメです。
翻訳機・聖者たち
People In The Box「翻訳機」「聖者たち」MV
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