あさから。

本の感想、音楽の話、思ったことなど。

宮下奈都「静かな雨」が映画化すると聞いて。

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 宮下奈都さんのデビュー作「静かな雨」が映画化されるらしい。という訳で、文庫版を買って、久々に読んでみたという話。感想は前に書いてるので、ふと思ったこととかを。

 静かな雨

 宮下先生のデビュー作の小説、「静かな雨」が映画化されるらしい。2004年に文藝春秋に掲載されて、ずーっと書籍化されずにいたけど、「羊と鋼の森」が話題になって、その後ハードカバーで書籍化された。

 自分が宮下奈都作品を最初に知ったのは、多分ほとんどの人がそうだと思うけれど「羊と鋼の森」で、その後「よろこびの歌」「終わらない歌」等々色々呼んで、一気に引き込まれてしまった。

 その頃、2016年の秋位だと思うけど、宮下先生のことを調べて、「どうやら、静かな雨って作品がデビュー作らしい」と思って、読んでみたくなった。でも、その時はまだ書籍化されてなくて、「どうやら中央図書館に行けば読めるらしい」ってことまで調べて、図書館に行った。それで、昔の雑誌は館内でしか貸してもらえないので、まずは図書館の中で座って読んだ。今でもその時の風景を結構覚えてる。読み終わった時に、寂しくなるような、重たくなるような、優しくなるような、なんか気持ちがお腹の方へ下がっていくような、そんな感覚になった。

 その後、静かな雨の所だけコピーして、本は返して家に帰った。市電で。

 それから結構すぐに書籍化されることを知って、「え、わざわざ行ったのに?」とか思ったけれど、今思うと、最初に読んだのが図書館で良かったなと思う。晴れた午前に市電で山の近くにある図書館に行って、人もまばらな中で、ソファに座って読んでたあの感じ。好きな作家のデビュー作で、「遠くまで来ないと読めない」って言うワクワク感も含めて、何かライブが始まる前みたいな、あの感じはすごく良かった。

 そういえば、新卒で入った職場を辞めてすぐだった。あまり後先を決めてなくて、時間があったからやりたいことをやってた。関係ない話だけど、辞めた理由というか、最後の後押しになったのが「終わらない歌」を読んだからだった。宮下先生が原千夏の物語を描いてくれてたおかげで決心が付いた。結果的に、今の仕事の方が気持ち的にすごく余裕があって良かったなと思う。まあ、その間に一つ挟んでて、それはそれで物凄く楽しかったんだけど。

 

サスフォー

 解説でも音楽の話をしていたけど、sus4みたいな、もっと言うとDsus4みたいな小説だなーと思った。コードに例えると。Dadd9でも良いかも。

 sus4はsuspended4thの略で、「宙ぶらりんな」、みたいな意味。簡単に言うと、ドミソって言う和音をドファソにしているのだけど、「なんだか落ち着かない」って言う感じになる。

 「羊と鋼の森」とか、「よろこびの歌」みたいな読み終わった後、すっと心が真ん中に収まるような小説と比べて、「静かな雨」はなんだか、フワッとした気持ちで終わってしまう。それが良いのか悪いのかは置いておいて、きっと、結構長い間心に残るんじゃないかと。

 一緒に載ってた「日をつなぐ」って小説も、初出が近い時期らしくて、やっぱりサスフォーだ。

 それと、多分何回も書いてると思うけど、読んでて心が整えられていく感じがする。中心に戻っていくような。人と会って話すことが多くなると、自分の中で中心がずれていく感覚がある。フワフワしたような、ざわざわしたような。そういう時、静かで美しい文章を読んでいると、1行1行読み進めるたびに、少しずつ自分が真ん中に戻ってくる感じがする。 

 例えば空気公団を好きな理由もそれで、音楽でも本でも、「心を真ん中に戻したい」って思ってる。整えられたい。

 

個人的な。

 あとは、何だろう。宮下先生のデビュー作を調べた時に、「静かな雨」って文字の並びを見て、「マジか」って思った。自分のやってるバンド名をその少し前に考えて、決まったのがCalm In Rainだった。好きな単語を沢山書いて、最終的に残ったのがCalmとRainで、繋げるのに間にInを入れた、という名前。意味合いは少し違うけど、「静かな雨」って単語に似てて、ちょっと嬉しかった。

 映画化、楽しみだけど、映画自体観るのが苦手なので、得意になりたい。本だといつでも少し読んで閉じてって出来るけど、映画だとまとめてみなきゃいけない感じがして、それが少し苦手。

 

 そんな感じの、とりとめもない話でした。6日目。

 それでは!