あさから。

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People In The Box「Tabula Rasa」の歌詞を考える。

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 People In The Boxのアルバム「Tabula Rasa」の歌詞のことを考える回です。というか、最近、考えてたことをまとめておこうという感じ。

 Tabula Rasa

 タブララサ、白紙の状態って意味のアルバムが去年発表されて、丁度1年位。名盤なのは間違いないけど、あんまり歌詞のこと考えてなかったなーと思い、グーグルで「People In The Box Tabula Rasa 歌詞」とかで検索してみたけど、全然引っかからないので、とりあえず自分で考えることにしてみました。

 曲の話は、そんなにしない(予定)です。書き出してみないと何とも言えない。そういう訳で、早速行ってみよう。

 あと、今回の記事は無計画に考えながら書いていく感じになるので、読んでくれた方で、「こうじゃない?」って思う事があったら、どんどんコメントして頂きたい。

 

アルバム全体として

 People In The Boxのアルバムは、フルアルバムでもミニアルバムでも、或いはシングルでも、「通して1つの作品」って作り方がされていると思う。それは、どのミュージシャンでもそうかもしれないけれど、特にピープルは歌詞のつながりって意味でもそこは大きい。

 作詞してる、ボーカル波多野裕文さんが、意識的にそうしているかまでは分からない。ただ、ミュージシャンがその人生の一部を捧げて制作してる作品だから、無意識だったとしても繋がりは作ってしまうはず。その方が、作品として美しいから。

 そういう訳で、タブララサも1つの作品として、何かしら芯が通ってるって考えながら書いていきます。

 それで、最初に書いておくと、タブララサは「生まれ変わり」をテーマに書いてるんじゃないか、と思った。「まっさらに生まれ変わって~♪」じゃないけど、生まれ変わる毎に、白紙の状態、何も刻まれていない状態で始まる。その、色んな視点を書いているのでは?と。それともう一つ、「どうにもならない」ってこと。あきらめること。アルバム通して、「まなざし」以外、ずっと自分の意志ではどうにもならないことに直面し続ける。その辺り踏まえて、行ってみよう。

 

各曲ごとに考える

1.装置

 ピープルのアルバムの1曲目、色んなパターンがある。Ghost Appleの「月曜日/無菌室」はアルバム全体の内容を包括してる感じがする。Family Recordの「東京」は、まさにオープニングって感じ。Kodomo Rengouの「報いの一日」は、アルバムのモードを象徴してる感じがする。

 じゃあ、今回の「装置」はって考えると、Ghost Appleの「月曜日無菌室」に近いのかな?と思った。簡単に説明すると、静かに海を眺めていたら、突然サイクロプス(単眼の怪物)が現れ、殺される。そして、気まぐれに(サイコロを振って)生き返らされる。というちょっとグロテスクな内容。

 サイロ、サイコロ、サイクロプス、サイクル、って韻を踏んでいるのも面白いけど、訳もなく、意味も分からず殺されて、同じように、意味も分からずに生き返る

 そこがポイントな気がした。「サイコロを振って」って、多分出た目によって、生かすか殺すか決める、みたいなことだと思うけど、死ぬのも生きるのも、まったく自分の思い通りにならないってことかなと。

 あと、サイクロプスは「神」として描かれてるのかなって思った。調べたら、色んなパターンがあるらしい。

 

2.いきている

憶えている うまれたとき
耳が痛かった 世界がうるさくて

 その言葉から始まる歌詞。その後、荷物をまとめ、玄関ホールを降りていく。

乗るはずだった列車はすでに満席で
行き先を変えることに決めた
足元を走るシマウマ模様の影
夜の風ごうごう 耳が痛かった

 最初、うまれたときのことを思い出しているのかと思ったけど、これが生まれた時かもしれないって思った。玄関ホールを降りて出ていくのが、新しい命を始めたことの比喩かな、と。

きみは知っている
どうにもならなかったこと

きみは生きている
どうしてただそれだけで
かなしいんだろう 

 なんとなく、ここは「装置」で歌ってることとつながる気がする。自分では、生きることも、死ぬことも、どうにもならなかった。

 そのあとの、「神と獣」ってフレーズ。神は、サイクロプスが出てくるし、獣はこの後、ライオンとか犬が出てくる。繋がり的には微妙なところだけど、一応。

 

3.風景を一瞬で変える方法

 ライオンが都市にやってくる所から始まる。なんとなく、この曲で「わたし」は獣なのでは?と思った。ちなみに、獣っていうのも比喩かもしれない。それも後で書く。

都市へようこそ、Mr.ライオン
待ちわびていた来世 

 タブララサは、曲ごとに何度も生まれ変わっているって思ってるけど、この曲では、人じゃなくて獣に生まれ変わってる。「わたし」は、ライオンじゃないかもしれない。トラか、ゾウか、何にせよ、ライオン側の何か。

リヴォルヴァ、ゆっくり回転中、即命中
あなたは手を汚さない やっぱり頭がいい
どうりで胸を痛めない、やましい?ノー。
これは風景を一瞬で変える方法 

 この時撃たれてるのは、ライオンか、自分か、別の獣か。いずれにせよ、獣側の何かが撃たれてる。「ゆっくり」って言うのが、走馬灯っぽく思えて、自分が撃たれた説が強め。

 で、ここからはもう一段落ちて考えてたこと。「獣」は「考え」の比喩では?と思った。風景を一瞬で変える、って言うのは、湧き出てきた思考をシャットアウトして、切り替えてしまうこと。自分の中にある、見たくない考え、感情なんかを、消し去ってしまう。そういうことかな、と。

回転ドア高速回転中
100回転 1000回転 

 これは、思考が渦巻いてるイメージ。

わたしはしあわせ

 獣を排除して、自分の見たくない考えを消し去って、私の心はしあわせ。次へ。

 

4.忘れる音楽

 この曲は、一番分からない。けど、「明日がくれば」っていうのがポイントだと思う。ロードオブザリングアラゴルンが「だが今日ではない!」って言ってた感じ。

 ぼくはきみをみすてるだろう、明日がくれば。だけど、それは今日じゃない。波多野さんの「逆説的に優しい」って歌詞な気がする。「どこにだって友達はいるよ 誰も僕らを知らないけど」とかもそう。

 

5.ミネルヴァ

 この曲は、多様性が無くなっていって、ひとつに統合されていくって感じの歌詞だけど、アルバムの中でいうと、時代を飛ばすというか、イメージをグンと別の所へ跳躍させて、幅を広げているような。

 

6.2121

People In The Box 2121 歌詞 - 歌ネット

 壮大な物語みたいな歌詞。

タバコを一本くれないか?火も借りていい?
歴史を手放そうとしたとき
きみはどうして何もできなかったのだろう
『きみは選ばれたひとりだったかもしれない』
初めて例外を、ひとつだけ注いでみたとしたら
走り出してたかな?
壁の向こうへ

 『』で語られるのは、誰の声だろう。自分の声だろうか。

もうすぐ充電が切れそうだ

 多分、死ぬ間際に、思い出しているのだと思う。

きみは選ばれたひとりだったかもしれない

 最初、『』で囲われてた台詞が、最後もう一度、カッコ無しで登場する。最初の台詞は、自分の頭の中の声。昔誰かに言われたことか、そう思っているのか。後に出てくる言葉は、こちらに向けて話している言葉では?

 「わたし」は、「選ばれなかった大勢」だと思って生きてきた。けど、もしかしたら、選ばれたひとりだったのかもしれない。最後に、こちらに向けて、生きてる私たちに向けて、それを告げて、切れる。

 

7.懐胎した犬のブルース

 この曲、「ぼく」は犬なのかなって思った。懐胎した犬とは、また別の犬。

楽しみつくしたら
さよなら友達よ
ぼくを救えないひと

 ぼく=犬は、もうすぐ死ぬ、もしくは殺されてしまうのでは。

ねえ ボーイスカウト かたく紐を結んで
暴れて 怪我せぬように
明日生まれ変わるから 記憶はいらない
バイバイ

 ぼくが暴れて、怪我をしないように、って思ってしまう。明日生まれ変わるっていうのも、そのままの意味で。

ねえ ボーイスカウト すぐに火を起こして
海をあたためて
懐胎した犬のブルースが聴こえる
ウォウ、ウォウ、ウォウ 

 ここ、何の根拠もなく自分のイメージの話(ここまでも全部そう)だけど、海=羊水のことかなと。「ぼく」はもう長くない。だけど、遠くから聴こえる懐胎した犬の声。その命は繋がってほしい。

 

8.まなざし

 この曲は、「ぼく」が「きみ」に向けて歌っている。

ようこそ世界へ

 イメージとしては、目の前に無垢な少年(少女)がいて、彼に幼い頃の自分を重ねているような感じ。ピープルで言うと「翻訳機」、バンプの「ロストマン」も、過去の自分への歌だと思っていて、それに近い感じ。

いつかきみは人間になって目論むのさ 

 ここでいう「人間になって」は、生物の分類的な意味じゃなくて、社会的な意味だと思う。バンプの「ギルド」に出てくる歌詞

人間という仕事を
与えられて どれくらいだ

 この歌詞も、生まれてからって意味じゃなくて、人間として社会的な役割を果たすことを求められてから、って意味だと思う。中学生くらい?

 まなざしに戻る。

 「ぼく」は、あきらめた側にいる。「きみ」はまだ白紙の状態。諦めを知らない。そんなきみが、この世界を耐えられますように。装置からずっと、どうにもならない世界を生きて、何度も諦めてきた。そんなぼくが、きみに願うのは、「耐えられますように」。それだけ。

 

おわりに

  1曲目から歌詞見ながら考えてきたけど、装置~懐胎した犬のブルースまでの、重みが全部まなざしの「耐えられますように」に込められてるのかな、と思った。

 どうにもならないことを繰り返した「ぼく」は思う。きっと、きみの人生もどうにもならない。諦めてしまうかもしれない。だからせめて、耐えられますように。

 そんな感じの、People In The Box「Tabula Rasa」の歌詞を考える、ノープランで描き始めたけど、意外にそこそこまとまった気がする。読んでて、「こうじゃない?」って思う事あれば、是非コメントしていってください。

 最後に、この前の配信ライブでスクショした写真を幾つか載せて終わりにします。

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 それでは!